漢字の面白さ
突然だが以下の傍線部の漢字を読めるだろうか。
- 全校生徒が講堂に集まる。
これは簡単だろう。答えは「あつまる」である。では次はどうだろうか。
- 町内会の面々が寄合に集う。
これも問題ないだろう。答えは「つどう」である。 意味としては「あつまる」と同義であるが、より硬い言い方になる。では次は読めるだろうか。
- 野菜の詰め放題に主婦たちが集る。
ここから読めなくなる人も出てくるのではないだろうか。答えは「たかる」である。 意味は「あつまる」や「つどう」に似ているが、少しニュアンスが異なり、 群がるという意味合いが出てくる。最後に次の文章を見て欲しい。
- 叢に集く虫を聞く。 (羽鳥千尋・鷗外)
これを読める人はなかなかいないはずだ。答えは「すだく」である。 「あつまる」や「たかる」の文語的表現である。
このように、同じ漢字でも多くの異なる読みが存在する。 一般に異なる読みだからと言って、異なる意味になるとは限らないが、 読みと意味には密接なつながりがある。例えば次の文章を見てみよう。
- 気高き肇国の精神を持つ。
本をよく読む人なら読めるかもしれないが、そこまで一般的な単語ではないだろう。 これは「ちょうこく」と読み、建国と同じ意味を持つ。 実際、「肇める」で「はじめる」という読みがある。 「肇」で「はじめ」と読む人名があることを知っている人は多いだろう。 「ちょう」は音読み、「はじ(める)」は訓読みであり、対応する単語に「肇国」が存在する。 訓読みというのは日本独自の読みであるが、基本的に意味に直結する。 漢字の面白さというのは、このように読みと意味に密接な関係があり、 それらに幅広いバリエーションがあるところにある、と個人的には思っている。
今後も度々このような内容で記事を書くこともあるだろう。 面白いと思った人は漢字学習を始めよう。