コード進行解析「fantastic dreamer」頭サビ〜Aメロ

今日はMachicofantastic dreamerのコード進行を解析する。 この素晴らしい世界に祝福を!の1期アニメOPであるこの曲だが、 もうむちゃんこいい曲なのでぜひ聞いてほしい(ここから)。 Bメロで3/4拍子に一瞬変わる辺りとかもう最高。 あと分析してみてわかったが、この曲コード進行が秀逸だ。

とりあえずまずはキーからだが、これはEメジャーの楽曲なので、 ダイアトニックコードは以下の通りである。

IM7 IIm7 IIIm7 IVM7 V7 VIm7 VIIm7(b5)
EM7 F#m7 G#m7 AM7 B7 C#m7 D#m7(b5)
T SD T SD D T D

である。また、同主調であるEmのダイアトニックコードは

Im7 IIm7(b5) bIIIM7 IVm7 Vm7 bVIM7 bVII7
Em7 F#m7(b5) GM7 Am7 Bm7 CM7 D7
T SD T SD D SD SD

である。今回は1番のみ解析を行なう。 コード進行はいくつかのサイトを参考にしたが、 互いにところどころ異なっており、 それらの比較もあわせて行なう。 コード進行は以下の通り。 なお、ノンダイアトニックコードは太字で示した。

頭サビ
E B/D# A G# G#/C
(E) (B) (A) (G#)
(E) (B/D#) (A) (G# Cdim)
A C D Esus4 E
(A) (C D) (Esus4 E) (E)
(A) (C D) (Esus4) (E)
イントロ
A#m7(b5) Adim7 G#m7 G6
(A#dim) (A) (E/G#) (Gaug)
(A#m7(b5)) (Am6) (G#m7) (Gdim)
F#m7 B7 Eadd9 % % %
(F#m/C#) (B) (E) (%) (%) (%)
(F#m7) (Bsus4 B) (E) (%) (%) (%)
Aメロ
E B/D# C#m7 E/B
(E) (B/D#) (C#m) (E/B)
(E) (B/D#) (C#m) (Bsus4)
A E/G# F#m7 B7
(Aadd9) (E/G#) (F#m/C#) (B)
(A) (G#m) (F#m) (Bsus4 B)
A B G#/C C#m7 E/B
(AM7) (B Cdim) (C#m) (C#m/B)
(AM7) (B Cdim) (C#m) (E/B)
F#m7(b5) A/B C#m7 B/D# E
(F#m) (B) (C#m) (E)
(F#m) (A/B B) (C#m) (B/D# E)
Bメロ
(3/4) F#m7 B7 G# C#m7
(3/4) (F#m) (B B/C# B/D#) (G#/D#) (C#m)
(3/4) (F#m) (B) (G#7) (C#m)
(4/4) A#m7(b5) F#m7 G#sus4 G#
(4/4) (A#dim) (F#m) (G#) (N.C.)
(4/4) (A#m7(b5)) (F#m) (G#sus4) (G#)
サビ
E B/D# A G# G#/C
(E) (B/D#) (A) (G# G#/C)
(E) (B/D#) (A) (G#)
A E/G# A#m7(b5) G#/C
(A) (E/G#) (A) (G#)
(A) (G#) (F#/A#) (Cdim)
C#m7 B/D# E A G#
(C#m) (E) (A) (G#)
(C#m) (B/D# E) (A) (G#)
A % E/G# C#m7
(A) (%) (E) (%)
(AM7) (%) (G#m7) (C#m)
F#m7 C D Esus4 E
(F#m) (C D) (Esus4 E) E
(F#m7) (C D) (E) (%)
アウトロ
A E/G# F#m7 E/G# A E/G# F#m7 A/B
Eadd9

ぱっと見ただけでもオンコードやノンダイアトニックコードがふんだんに散りばめられている。 順番に見ていこう。

頭サビ

I => V/VIIは強進行になっているが、第1転回形にすることでルートが半音下行でつながっている。 この次のV => IVの進行は一般には禁止されているが、Vを転回形にすることでルートが弱進行している。

その後のIIIはノンダイアトニックコードであるが、IIImの代わりによく用いられる。 IIIが来ると次にVImやIVに進行しやすいが、ここでもA (IV)に進行していることがわかる。 このIIIをIII7と捉えれば、セカンダリードミナントの考えからVIm (IVの代理)に進行しやすいことは理解できる。

ところで、IIIとIVの間にはIII/bVI、あるいはbVIdimが挟まっている。 後者はV7の代理コードであるが、そう捉えた場合VI7 => IVは逆進行になってしまっている。 先のV/VII => IV同様、この曲はV => IVへの進行を多く用いているようだ。

一方、前者のIII/bVIは解釈が難しい。 III/bVIにはトライトーンが含まれておらず、ドミナントの役割はないように見える。 ルートの進行だけ見ても、III => bVI => IVと強進行でも半音進行でもない。 というわけで、個人的にはIII/bVIではなくbVIdimと解釈しておく。

最後に、bVI => bVII => Isus4 => Iという進行であるが、もう好きすぎる。 bVIとbVIIは同主調からのモーダルインターチェンジであり、サブドミナントマイナーと解釈される。 bVI => bVIIと来たら一般にはIに解決するが、ここではsus4を間に挟み、 少し遠回りをしている。これもまたいい味を出している。 作曲することがあればぜひとも使いたい進行である。

イントロ

頭サビだけでも盛り沢山であったが、このイントロも解析しごたえがある。 1拍目の#IVm7(b5)はいきなりノンダイアトニックコードであり、借用和音でもない。 これはII7の代理として用いられることが多く、IVの直前に置かれやすいコードである。 別サイトでは#IVdimとしているところもあったが、構成音を考えればわかるように、 これも代理として用いることができるだろう。

余談ではあるが、dimと表記した時一般には4和音を想定すると思うが、 場合によっては3和音の場合もある。 今の場合どちらでも良いとは思うが、基本的に4和音で捉えることにする。 つまりdim = dim7ということである。

さて次のコードはIVdim7となっているが、よく見ると#IVm7(b5)のR, m3, b5が全て半音下行している。 構成音の多くが半音下行するので、非常にスムーズに進行している。 さらにIIIm7 => bIII6 => IIm7の流れに至るまで、全てルートが半音下行している。 IIm7からはV7 => Iadd9とツーファイブワンの典型的な進行になっている。

Aメロ

Aメロでは8小節目のV7の直前まで、オンコードを用いつつルートが半音あるいは全音で下行し続けている。 またよく見るとこの8小節は、カノン進行の亜種になっている。 カノン進行はI => V => VIm => IIIm=> IV => I => IV => Vであるが、 4つめのIIImが本来のトニックのIに、6つ目のIVが代理のIImになっている。

9小節目からは、IV => V => VImの進行の途中に、III/bVIあるいはbVIdimが挟まっている。 ここではこれは後者で捉えたほうがわかりやすく、パッシングディミニッシュと考えられる。 9-12小節は王道進行(IV => V => IIIm => VIm)の亜種であると考えられ、 IIImを代理のVImVImを本来のトニックのIにしたものになっている。 IがI/Vというオンコードになっている理由はよくわからないが、 一応次のIIm7(b5)に向けて、ルートが弱進行するようにはなっている。

13小節目のIIm7(b5)は同主調からの借用和音であり、サブドミナントマイナーである。 すぐ後に本来のサブドミナントに進行し、その後IV => VIm => V => Iと進んでいる。 ここでもオンコードを駆使し、ルートが半音あるいは全音で上行するように工夫されている。

長くなったので続きのBメロからは次回に回そう。 Bメロの3/4拍子に変わるところは、聞いていてワクワクが止まらない。 今日中に解析するかもしれない。